機能性表示食品という制度が新たに登場し、私たちは食品に関する正しい情報を得やすくなりました。しかし、これは食品ひとつひとつについての情報が明確になる制度であり、複合的に使った時にどのような効果が得られるかについては言及されていません。
ここでは、機能性表示食品の概要や、それらを組み合わせた機能性弁当について説明していきます。
機能性表示食品制度とは
機能性表示食品制度は、事業者の責任において、「脂肪の吸収をおだやかにする」など、その食品の機能性の表示ができる制度です。この制度を利用するためには、事業者は販売前に食品の安全性や機能性に関する科学的根拠などについて、消費者庁長官へ届け出なければなりません。
この制度が登場する前、このように機能性の表示ができる食品は、特定保健用食品と栄養機能食品のみに限られていました。栄養機能食品の場合、特に届出をする必要はありませんが、機能性を表示するために使える表現は、国によって定められたものに限られています。
また、通称トクホと呼ばれる特定保健用食品の場合は、国による個別の審査を通る必要があり、事業者の負担はとても大きなものでした。新たに登場した機能性表示食品制度を利用する場合は、消費者庁の審査を受ける必要がありません。
しかし、その分、事業者は自らの責任において適切な表示を行う必要があります。そして、届出された食品に関する情報は、消費者庁のウェブサイトで公開されており、消費者は購入前に情報を得られる仕組みになっているのです。
消費者だけでなく、事業者にとっても様々な選択肢を増やせるようになったと言えるでしょう。この制度は、一部を除き、生鮮食品を含めてすべての食品が対象です。対象外となっているのは、特定保健用食品を含む特別用途食品、栄養機能食品、アルコールを含有する飲料や脂質、コレステロール、糖類(単糖類または二糖類であり、糖アルコールでないものに限る)、ナトリウムの過剰な摂取につながるものです。
そのため、この制度を利用した食品はたくさん登場するようになりました。
機能性表示食品制度はひとつの食品について言及したもの
機能性表示食品は、消費者がそれぞれの食品について正しい知識を得るために大きな役割を果たしている制度です。しかし、ひとつひとつの食品について機能性を明確にしているため、複合的に摂取した場合に、その効果がどうなるかについては、特に言及されていません。
機能性弁当を摂取した場合の調査
日本の農業と食品産業の発展のため、様々な分野の研究開発を行っている農研機構では、この機能性食品に注目し、2013年から2016年度までの期間で、「機能性弁当」を継続摂取した場合の効果について調査を行っていました。
機能性弁当とは、機能性農産物を組み合わせたものです。この調査では、一週間に5回、平日昼食時にこの機能性弁当を摂取し、それを12週間継続するというヒト介入試験が行われました。機能性農産物を複合的に摂取した場合に、健康維持・増進効果があるのかを検討し、生活習慣予防効果を明らかにすることがねらいでした。
この試験では、肥満傾向が認められる、内臓脂肪面積が100平米以上ある男女159人をランダムに4つの群に分けました。群1は茶のみ機能性食品にしたグループで、期間中は高カテキン緑茶である「べにふうき」緑茶エキス粉末を1日3包摂取しています。
また、群2はおかずのみ機能性食品にしたグループです。主菜、副菜1、副菜2からなり、機能性農産物を使用した日替わりの献立が用意されました。そして、群3では米飯のみ機能性食品にしました。一週間のうち3日間は白米にβ-グルカン高含有大麦を50パーセント混ぜた、50パーセント大麦パックごはん180gを摂取し、残り2日間は表面加工玄米パックごはん180gを摂取しました。
最後の群4では、茶、おかず、米飯のすべてを機能性食品にしていました。試験中に用意されたレシピは、全部で20日分あり、同じものを3回繰り返し、合計で60日間分提供されていたようです。
機能性弁当に関するこの調査では、内臓脂肪面積と血糖コントロール指標(Hb1Ac、グリコアルブミン、1,5-アンヒドログルシトール(AG))が測定されました。最終的に、機能性弁当を80パーセント以上の日で摂取した137名について、解析が進められています。
調査の結果で明らかになったこと
このヒト介入試験によって、内臓脂肪面積は機能性弁当を摂取することで減少することが明らかになりました。茶、おかず、米飯のすべてを機能性食品に置き換えた群4と、米飯を機能性食品に置き換えた群3においては、12週にわたって減少傾向がキープされており、摂取し続けることで高い効果が得られることが読み取れます。
また、試験開始時に内臓脂肪面積が100平米~127平米あった人や、女性では、米飯を機能性食品にすると、他の食品を機能性農産物に変えた場合に比べて内臓脂肪面積の低下が顕著だったことも報告されています。機能性食品は、単品ではなく、複合的に摂取してもその効果には期待できることが明らかになりました。
特に、50パーセント大麦や玄米を摂取した場合に高い効果が得られるようです。
機能性表示食品を利用する前に知っておきたいポイント
機能性表示食品は、健康維持・増進を目指すために役立つものです。ただし、体に良いからといって、ただやみくもに摂取することは、避けるようにしましょう。多く摂取すればするほど、高い効果が期待できるというわけではありません。
むしろ、過剰に摂取することで健康被害が発生する場合もあるのです。食品のパッケージには注意喚起事項が記載されているため、事前によく確認した上で、摂取するようにしましょう。一日あたりの摂取目安量や摂取方法などについても把握しておく必要があります。
また、機能性表示食品だけに頼るのではなく、普段の食生活を見直し、バランスの良い食事にすることも忘れてはなりません。主食、主菜、副菜を基本とし、バランスが整っているか、まずは自分の食生活を振り返ってみましょう。
その上で、機能性表示食品を効果的に取り入れていくことが大切です。
機能性表示食品を通して自分の健康の見直しを
機能性表示食品は、単品で摂取することはもちろん、複合的に摂取しても効果が得られることが、農研機構の調査により判明しました。機能性表示食品を通して、まずは自分の健康を見直してみてはいかがでしょうか。見直すことで、今の自分に何が必要なのか、見極められるようになります。
効果的に摂取することで、より高いメリットが得られるでしょう。